機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

一年戦争後の宇宙世紀の世界観を独自の目線で表現しています。

【第一話】Unknown

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機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

【第一話】Unknown



宇宙世紀0080年6月18日11時45分

サイド4宙域

 

「まもなく予定地点に到着する」

アレン隊長からの無線だ。

アレン・ビーズン隊長は階級は大尉、第15独立試験部隊(アルバトロス隊)の隊長として隊を纏めている。年齢は30歳。元々は戦闘機乗りだったが、初期のモビルスーツパイロット候補としてモビルスーツに搭乗し、大きな戦果を上げている。既にベテランの風格もあるパイロットだ。

搭乗機はジム・キャノンである。

母艦ホーネットから出撃して約15分、コンソールパネルにも予定地点に近づいたことを知らせるアラートが点滅している。

ステロイドの宙域の割にはミノフスキー粒子の濃度は低いようだ。

無線も届くしレーダーも生きている。

「了解しました!」

別の若い声が先ほどのアレン隊長の呼びかけに反応した。ローラン・シーム曹長だ。搭乗機はジム中期型である。

隊の中では最年少で、まだ実戦未経験の18歳である。

彼にとって初陣のこの作戦は、もしターゲットを発見した場合は初の実戦になるかもしれない。

少し声がうわずっていたのが、無線を通じてシンジにも分かった。

「了解」

お手本かなような返答をしたシンジだったが、おそらくローランには届いていないだろう。

各モニターとコンソールパネルに釘付けになっている姿が想像できるためである。

そうこうしているうちに肉眼でアステロイドが見える距離まで近づいていた。約1000キロといったところ。

「距離500で無線は封鎖する。あとは手筈通りの哨戒行動だ、いいな!」

「了解です!」

「了解」

アレン隊長の無線にローランとシンジがそれぞれ返答する。

シンジは機体の設定をクルーズモードから戦闘モードに切り替えた。

パワーゲージが一気にレッド近くまで上昇、「グァン」とジェネレーター音と振動がコックピットに響く。

「よし」と一声、各パネルの異常がない事を確認、改めて操縦桿を握り直して、シンジ自身も戦闘モードに切り替えた。

 

11時55分、目標まで距離500キロの所でシンジの左側に位置していたアレン隊長のジムキャノンの右手が上がるのがモニターから確認できた。と同時に無線の音がプツンと途切れる。

手筈通りジムキャノンは上昇しながらアステロイドに突っ込んだ。

シンジは新人のローラン曹長とのペアで下降しながらアステロイドに侵入した。

ここもルウム程ではないが、一年戦争の名残りが残る宙域で、その上様々な石ころ(隕石)も混ざっていて、連邦も戦後は本格的な捜索が出来ずにいた。

戦後この宙域でモビルスーツらしきアンノンが複数回目撃されており、ジオン残党兵の隠れ家であると断定、その調査にアルバトロス隊が任命されたのである。

 

ステロイドに侵入した途端ミノフスキー濃度が急上昇し、レーダーが一気に死んでしまった。視界には連邦軍の主力戦艦サラミスが無残な姿で広がっていた。ミノフスキー濃度が高くなって当然である。

モニターからの視覚でしか周囲の状況を確認できないシビアな状況にあってもシンジは冷静に各モニターと計器類に目をやり、ちょっとした動きを見逃さないよう気を配った。

一方のローラン曹長は、機体が明らかにふらついていて、オドオドしているのが見てとれた。

シンジは左後方にいたローラン曹長のジムに相対速度を合わせ、真横に付いたところで左手のマニピュレーター(手)でジムのライフルを握った。

ジムがビクッとした動きを一瞬見せたがすかさず「ローラン曹長!」と声をかけた。

モビルスーツ同士などで直接触れると「お肌の触れ合い回線」と言われる接触回線による直接会話が可能になる。この通信はミノフスキー下でも可能であり、盗聴される事も無いので、二人きりでの会話であれば非常に有効な通信手段である。

シンジの呼びかけにハッとしたローランは右のモニターでシンジのジム・ドミナンスがすぐ真横にいる事に初めて気付いた。

「緊張しているのか?大丈夫だ、訓練通りやればいい」

訓練でも好成績を収めたことからこのアルバトロス隊に抜擢されたローランであったが、やはり18歳の若さで初陣となると硬くならないわけが無い。この気持ちが分かるシンジは、なんとかローランの気持ちを和らげようとした。

ふと我に帰った感じがしたローランは、ようやく冷静に計器類を見れるようになり、「ふぅ〜」と大きく息を吐いて「少尉殿、申し訳ありませんでした。もう大丈夫です。」

明らかに声に張りがあり、冷静さを取り戻したのだとシンジもわかったので、ジム・ドミナンスの手を離した。

左のモニターに映るジムを見て、「よし」と声にはしなかったが小さく頷いた。

 

サラミスの残骸は沈んで一年近く経つというのに未だに熱反応を発している。おかげで残骸の熱なのか、モビルスーツの融合炉の熱なのかの判断がつかない。

軍がずっと捜索を嫌がっていた理由がここにある。

ミノフスキー粒子は濃い、おまけに熱反応もでたらめな状況で不意の攻撃に対応するにはかなりの練度が必要になる。

誰も背中から撃たれたくなんて無い。そんな思いもあってこの宙域の捜索には躊躇していたのだ。

そこで捜索の精鋭を集めたアルバトロス隊が結成され、アレン隊長を始めとして総勢10名の部隊として構成されている。

シンジも戦争の功績から部隊へ加入され、ジム・ドミナンスと共に捜索部隊の一員となっている。

初期のモビルスーツ開発(RX計画)からモビルスーツに携わっているシンジは、数多くのテストを行い、こういった目視でしか確認できないデブリの中も多く経験している。

そんなシンジにとってはこのシチュエーションは決して不可能なミッションではく、正に打って付けのパイロットであった。

そんなシンジだから新人パイロットを従えながらでもこのミッションは可能であった。

センサーや計器類には目をくれず、正面と左右、上部のモニターをほぼ一つの視界に入れて全体を見渡している。

そのため小さな動きや変化も見逃さない。シンジにはそんな能力も備わっている。

そんなシンジだからこそ目に留めることができた。一瞬、パッと光が右のモニターの上部に捕らえた。即座にそこを指でタップ。

機体がそのエリアを記憶しオートでそこへ向かってくれる。

ローランも突然方向転換したジム・ドミナンスを追いかける。でもターゲットが分からないため、ひとまず後ろに着く。

光のあったポイントに向かっている途中、そこから二つの筋が見えた。シンジは即座に識別チェック。データ照合…適合。二機共MS-06ザクだ。

ローランも確認できた。訓練通りだ。

シンジは上方に向かったザクを追いかける。冷静さを取り戻したローランは下方に向かったザクを追う。シンジはローランが下方に向かったのを確認して、スロットルを全開にした。推力はこちらの方が上だ、一気に追い詰める。

ザクはデブリを器用に交わしていくが、もちろんシンジにとってもお手の物だ。

正面の大きなデブリを上方に交わしたザクに対して、シンジは下方に向かった。そしてデブリを交わした二機は向き合った。

既に右腕の二連ビームキャノンはザクを捉えている。この状況になる事に確信を持っていたかのように。

二機が向かい合ったと同時にロックオン。

ザクは回避行動を取る余裕もない。

二連ビームキャノンが光を放つ!

 

【第二話】帰還 に続く。

9月5日12:00配信予定

 

【注記】この物語はフィクションであり非公式です。また、公式には出てこない機体も登場するなど、パラレルワールド的な物語である事をご了承ください。

 

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ジムキャノン ©創通・サンライズ


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