機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

一年戦争後の宇宙世紀の世界観を独自の目線で表現しています。

【第二話】帰還

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機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

【第二話】帰還

 

ザクがデブリの上部に向かったのを確認したシンジは、すかさず下部に向かった。デブリの状況から上下に分かれてもその先でまた鉢合わせることが可能だと分かったからだ。

デブリを通過すると目の前にザクがいる、その状況を作るために速度を合わせる。

そして右腕の二連ビームキャノンのロックを解除、銃口を正面に向けて発射態勢を作った。

デブリを抜けたら想定通りザクが目の前にいた。すかさずロックオン。

ただしコックピットでは無く、マシンガンを持っている右腕だ。

ザクは回避行動を取ろうとするが、遅い。

シンジは右手の操縦桿にあるビーム発射スイッチを押す。

二つの銃口から光が放たれた。

二連式のビームキャノンだが、二連で一口のビームライフルと出力はほぼ同等である。

そんなビームキャノンから放たれた二筋の光は狙い通りザクの右腕を吹き飛ばした。

もぎ取られた右腕は、緊急措置として即座に胴体との接続部からパージされ、機体本体への致命的なダメージから守っている。

だが四肢の一つを無くした機体は当然のことながらバランスが崩れる。空間における姿勢制御システムAMBAC(Active Mass Balance Auto Control)は四肢があってこそ成り立っている。

その一つを失ったザクはバランスを崩し、先程までの機敏な動きは一気に無くなった。

こうなればこっちのものだ。動きが鈍くなったザクに一気に接近、左腕のシールドをパージし、左腕にマウントされているボックスタイプ・ビームサーベルにビームを形成、トンファータイプのビームサーベルだ。

ザクも抵抗しようと左腕で左の腰に装備されたヒートホークを掴んだが、その直後、ビームサーベルでザクの左腕を切り落とした。

完全に丸腰になったザクはまたその場から離れようと推力を全開にしたが、再びジム・ドミナンスの二連ビームキャノンが炸裂する。

二発連射し、左右の脚を撃ち抜いた。

これで完全に制御不能となり、抵抗もできなくなった胴体だけのザクの頭をビームサーベルで串刺しにしパイロットから視界を奪った。

頭部のメインカメラと四肢全てを無くしたモビルスーツは、大半のモニターが死んでしまう。

頭からビームサーベルを引き抜いてビームを納め、ザクを抱き抱えた。

 

パイロット、聞こえるか?」

接触回線でザクのパイロットにシンジは話しかけた。

しかし返事は無い。当然だろう。

ジオン兵の多くは連邦への投降を認めない。まして捕虜などもっての外。自爆すら厭わない精神の持ち主であるから。

だが今は戦争中ではない。ここで自爆しても他の兵の士気が上がるわけでも無く、自分の命が虚しく散るだけ。ジオン再興を夢見る自分達は、連邦の捕虜になる侮辱を受けようと、生きて未来を勝ち取りたいのだ。

シンジもそんなジオン兵の気質がよく分かっている。返事がない事も百も承知だった。

なので、問いかけはその一度で終わらせた。

次はローランだ。もう一機を追ったローランはどうなった?

索敵を回しているとデブリの影から大きな爆発らしき光を確認した。

望遠する。爆破を避けるように白い機体がいた。ローランのジムだ。

シンジはザクの胴体を抱えたままローランの元は向かった。

ローランも、センサーの反応でジム・ドミナンスが近づいてきた事に気付いた。

ザクを抱えた姿に一瞬「?」と思ったが、「さすが少尉殿だ」と小声で言った。

「大丈夫か?ローラン」

シンジの問いかけにローランは

「申し訳ございません」と謝罪から始まった。

この作戦はあくまでも捜索である。戦闘は極力避け、もし戦闘状態になったとしても敵機は爆散させず捕らえる、というのが本質であった。

出撃前のブリーフィングでも出た話しだ。

シンジはその通りにパイロットを無傷で捕虜にしている。

にも関わらず自分は敵機を爆散させてしまった。その事の謝罪が第一声となった。

「詳しい話は戻ってから聞かせてくれ」

簡単な会話のやり取りだ。このやり取りはザクのパイロットにも聞かれている。

そのため多くは語らない。その事は新人のローランにも分かっていた。

その時だ、センサーにまた別の反応があった。

シンジはそのポイントを確認すると、アレンのジムキャノンが近づいている事が確認できた。

デブリの中でモビルスーツの爆発を確認し、すぐさまこのポイントに到達できる。伊達にアルバトロス隊の隊長ではない。

「アジトのポイントは分かるのか?」

接触回線でシンジに聞いた。

「はい、ですが…」

シンジは言葉を詰まらせた。

「この戦力でアジトに攻め込むのはあまりにも危険だ。アジトのポイントを押さえたのと、このザクを捕獲できただけでも成果と言える」

シンジはアレンの意見と一致したので

「はい」

とだけ答えた。

「もう一機を撃墜したのはローランか?」

「はい、申し訳ございません」

やはり謝罪になってしまう。

「まずは自分の命を守る事が最優先だ。気にするな。むしろ初陣で一機墜としたんだ、よくやった。それでも謝りたいなら、敵とはいえ殺してしまったパイロットの冥福を祈ってやるんだ」

「ありがとうございます」

少しだけローランに元気が戻った。

「よし、ホーネットに帰還する」

「了解!」

二人の見事なハモリだった。

 

14時20分、「ピピピ」と警告音が響いた。ホーネットが自機を捕捉した合図だ。まだこちらからは確認できないが、ペガサス級と同スペックのレーダーを搭載するホーネットはキャッチするとこができた。

それから5分としないうちにこちらからもホーネットと随伴機ユイリンの2隻を捕捉できた。最大望遠でも確認できる。距離およそ2000キロだ。3機はクルーズモードから着艦モードに切り替える。

2000キロあっても宇宙でのモビルスーツの速度なら五分くらいで到達してしまう。速度にして約20000km/hだ。マッハ(1225km/h)の20倍近い速度になるのだが、それでも抵抗が全く無い広大な宇宙の中にいれば、そこに停止している感覚になる。

また、宇宙では停止する時は加速する時と同じだけの推力が必要になる。

調子に乗って推進剤を使いすぎたり、戦闘終了後は推進剤が残りわずがとなる事があるため、その場合は無理に着艦せず、ワイヤーやネットに引っ掛けて停止させている。

今回は推進剤の残量も多いので、自力で着艦できそうだ。

ホーネットはネルソン級で、サラミス級モビルスーツ搭載機能を追加した改修艦だ。ベースはサラミスだが、左右にカタパルトが追加されているのが特徴で、内部に小さいながらモビルスーツデッキも備わっている。最大積載数は4機だ。

ユイリンはノーマルのサラミス級のため、モビルスーツ搭載機能はない。

そのため3機ともホーネットに着艦する。

向かって左側のカタパルトにアレンとローラン、右側にシンジが着艦する。

着艦モードにすれば、着艦する場所さえ指定すれば、後はオートで着艦してくれる。全てプログラムされているので、難なく着艦できた。

ただ、ローランはザクの胴体を抱えたままの着艦になったが、持ち前のセンスで無事着艦に成功した。

 

シンジはコックピットから出ると、足元に控えているメカニックの元に降りた。機体の状況を軽く説明すると、デッキ後方のエアロックに向かうのだが、やはり奪取したザクが気になる。

エアロックに着いてから振り返ってザクを見ると、コックピット周辺には既に10人位の乗組員が銃を構えて待ち構えていた。

その中にアレンのノーマルスーツが拳銃を構えている姿も見えた。

ザクのパイロットが出てくるところを見たかったが、すぐローランもエアロックに入って来たため、渋々エアロックを閉じた。

ロッカーでノーマルスーツ(宇宙用戦闘服)から制服に着替えて、それぞれ自室に向かった。

ロッカーを出て、突き当たりを左に曲がったところで背後から「お帰りなさい」と女性の声がした。知っている声だ。

振り返ると、制服の上に白衣を纏ったポニーテールの女性が、シンジを優しい笑顔で迎えた。

サラ・アライ。

アルバトロス隊の専属看護師で、シンジの恋人だ。

シンジはその声を聞いて、さっきまでの疲れを忘れた。

「ただいま」

ちょっと照れた感じで答えるとサラの方にゆっくり流れていき、そのまま抱きしめた。

「無事帰ってきてくれてありがとう」

目を閉じてシンジの耳元で囁いた。

「あぁ」

シンジは軽く返事をし、お互い見つめ合って唇を合わせた。

「今からシャワー浴びてくる」

「臭いもんね」

「うるさい」

そう言ってシンジは彼女から離れて、そのまま自室に向かって流れた。

「また後でね」

サラの呼びかけに振り返らず右手を上げて答えた。

サラは柔かな表情でシンジの背中を見送った。

 

【第三話】捕虜 に続く

2021年9月12日配信予定

 

【注記】この物語はフィクションであり非公式です。また、公式には出てこない機体も登場するなど、パラレルワールド的な物語である事をご了承ください。

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参考:ネルソン級 ©創通・サンライズ

 

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