機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

一年戦争後の宇宙世紀の世界観を独自の目線で表現しています。

【第三話】捕虜

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機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

【第三話】捕虜

 

宇宙世紀0080年6月18日19時

 

自室でシャワーを浴び終わったシンジは、壁に備え付けられているインターフォンの着信ランプが光っていることに気付いた。

再生を押すとジョージの声で「シンジ!捕虜見に行こうぜ!先に牢屋に行ってるからお前も来いよな!!」とメッセージが残っていた。

アルバトロス隊の一員で同じ歳のジョージ・クーカー少尉はシンジとウマが合い、共に行動することが多い。つまり、一番の仲良しだ。

そんなジョージもミーハーだ、捕虜が気になるらしい。

この辺の感性もシンジと合っていると言える。

再び制服に着替えたシンジは部屋を出て捕虜のいるプリズン(牢屋)に向かった。

ネルソン級サラミス級と同じく艦の中央から後方にかけて人の活動エリアが集中している。

建物に見える最上階がブリッジでありその下がサブブリッジとブリーフィングルーム。

更にその下に居住区や食堂があり、その下が甲板と同じ階層で医務室、そしてプリズンがある。

更にその下がモビルスーツデッキだ。

エレベータでプリズンがあるフロアで降りると、部屋の外にも銃を構えた警備兵が4~5人ほど囲っていて、更にその外側にシンジと同じ野次の乗組員が物珍しそうに覗いていた。

そこにジョージの姿も見えた、と思ったらジョージもシンジを見つけて「おーい、こっちこっち」と必要以上に大きな声でシンジを呼んだ。

一瞬空気が止まったけどジョージはお構いなしだ。

たまに、こいつ本当に軍人か?と思う言動が気になることはある。

警備兵の一人が二人に対し

「ここまでですよ」

と二人を制すると

「わかっています」

シンジもジョージも無理に入り込もうとはしない。ほかの野次同様プリズンの中を覗き込んだ。

そこには一人の男が捕虜の格好で丸椅子に座ってスポットライトを浴びていた。

無骨な感じの表情で髪はボサボサ、切れ長の細い眼はずっと辺りを見渡していて不気味な感じを出していた。

そんな捕虜に対して常に冷静に尋問していたのがホーネットの艦長エイパー・シナプス大佐だ。

後の「ガンダム開発計画」でペガサス級強襲揚陸艦アルビオンの艦長に就任している人物である。

尋問に対して曖昧な回答しかしない捕虜に対して、常に冷静な態度で対応しているシナプス大佐の一挙手一投足に、周りの人間たちも固唾を飲んでいる感じだ。

しかしシンジが気にしていたのは捕虜だけでは無かった。捕虜に対して拷問をしていなかという事も気になっていた。

戦時中は南極条約によって捕虜に対する拷問や自白剤を使った強制自白など、非人道的な扱いが禁止されていた。

それが終戦によりその効力は失効しているが、軍は希望する部隊には引き続き条約を批准する許可を出していた。

アルバトロス隊は南極条約を批准する事を決めた。最前線で戦う部隊ではないため、不必要な殺傷はしないというのがアルバトロス隊の共通の理念である。

それを積極的に実行しているのがシナプス艦長だ。

シナプス艦長は連邦にあって、とても有能な軍人で正義感に溢れている。

それ故に将官クラスには煙たがられている事も否定できない。

そんなシナプス艦長に対して、捕虜は相変わらず曖昧な回答しかしない。

やはり専門的な機関でなければ尋問は難しい。

これまでも数多くの尋問やネゴシエイトを経験してるシナプス艦長でさえもお手上げに近い状態だ。

参謀本部から捕虜を引き取りに来るまで二時間ほどかかるため、それまではこの宙域に足止めとなってる。

 

もう20時だ、どおりでお腹がすくわけだ。そのままジョージと遅めの夕飯を食堂で取った。

ジョージはアメリカの血筋でとてもフランクな性格である。人を見た目や上下関係で選ばず誰とでも打ち解けるとこができる。

軍人としては若干問題がある性格だが、アルバトロス隊はそんな彼を受け入れている。

今回彼は捜索作戦には参加せず、艦隊の護衛として搭乗していた。

そのためジョージの出番は無くルナツーに帰ることになった。

 

21時、自室に戻り今日の戦闘の報告書をパソコンで入力し始めた。

本来なら着艦後艦長にまずは直接報告するのだが、捕虜の件もあり一旦レポートを提出する。艦長への報告は明日改めてだ。

レポートを入力しているとちょっとした振動を感じた。おそらく参謀本部からのお迎えが接触したのだろう。そのまま捕虜をサイド4の駐屯地へ連れて行って尋問の続きを行うという。

拷問をしなければ良いのだが。それが気掛かりだった。

また、ジョージから聞いた話だが、ザクがいた辺りの再捜索隊がルナツーから発進したそうだ。

そんな情報どこで手に入れたのだか。

その時は敢えてそこまで突っ込まなかったが…。

アルバトロス隊の別働隊が捜索に向かったらしい。

しかし発見は難しいだろう。恐らく既にものけの空になっているかもしれない。

ジオン残党兵は、こうして各地を渡り歩きながら再起の時を待っているのだ。

早く捕えないと...シンジの焦りがキーボードを強く叩かせた。

 

【第四話】シンジとサラ に続く

2021年9月19日12時配信予定

 

【注記】この物語はフィクションであり非公式です。また、公式には出てこない機体も登場するなど、パラレルワールド的な物語である事をご了承ください。

 

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~前回までのお話はこちら~

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