機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~
【第四話】シンジとサラ
シンジとサラの出会いはアルバトロス隊が結成された時だ。
同じ年齢で同じ日本系の血筋であり、セカンドネームも似ている。
二人はすぐ意気投合し、交際に発展した。
最初は、いつ死ぬか分からないパイロットだから交際しない方がいい、シンジはサラとの交際には後ろ向きだった。
でもだからこそお互い認め合い、短い時間になるかもしれないけど通じ合う何かが出来ればそれでいい。
サラはシンジに恋心以外にも何かを感じ取っていたようだ。
サラは幼くして両親を亡くしているため、ずっと一人で生きてきた。一番多感な年頃に体を売って生計を立てている時もあった。だからこそより感受性が強く、同じ感性を持った人物に強く惹かれる。まるでニュータイプ同士が惹かれ合うように。
サラはシンジに対してそんな感覚を抱いていた。
ようやく報告書を一通り書き終えたのでレポートをサーバーに保存した。
くぅ~と背中を伸ばすと「トントン」とドアをノックする音が聞こえた。
来訪者の見当はついている。ドアに向かって歩いて、開ボタンを押してドアを開くとそこにサラが照れ臭そうに立っていてシンジを見上げていた。
昼間とは違い、Tシャツにハーフパンツ、髪も下ろし化粧もしていない。シンジの部屋にくるための格好だ。シンジもそれを分かっていて、左手で彼女の背中をゆっくり支え部屋に招き入れた。
サラはベッドに向かい、シンジはデスクに向かった。
ベッドに腰掛け様に「忙しかった?」と問いかけると、「いや、今終わったとこだよ」とパソコンを操作しながら返事した。
パソコンをシャットダウンしディスプレイを閉じる。デスクと一体型のパソコンのため、ディスプレイを閉じると完全なテーブルなるのだ。
シンジはサラの右隣に座り、左手で頭を抱き抱えるように自分の肩に寄せた。黒く艶のある髪からの匂いでとても和らいだ気持ちになる。
サラは無言のままシンジの顔を見る。シンジから顔を寄せキスをした。一度離した唇は、今度はサラから唇を寄せ、舌を絡ませる。
そのままシンジを押し倒し、更に強く舌を絡めていく。
シンジの出撃前(予定が分かっている場合)と出撃からの帰還後は、二人は必ずセックスしている。
それはただ性欲を満たすためだけでは無い。お互いが生きている事を実感するためだ。
例え戦時下で無いとはいえ、パイロットである以上最前線では無いにしろ命を賭ける戦場に向かう事も少なくない。それはお互い同じだ。
これが最後になるかもしれない。そう思うと自然とお互い一つになる事を求め合う。平和な時には決して芽生えない感情だ。
二人の大切な時間は永遠に続く感じがした。
6月19日7時
「ピピピピ、ピピピピ」
アラームの音が鳴る方にめくらで手が伸びてきた。2、3回空振りした後、アラームに手が届き停止ボタンを押す事ができた。
起き上がりと同時に大きく背伸びをして、大きなあくびもした。
8時からブリーフィングがあり、シナプス艦長に昨日の哨戒任務の報告をしなければならない。
そのためにこの時間の起床だ。
嫌なことを思い出して完全に目が覚めた。あまり良い目覚めではない。
だが傍で寝息を立てながら眠っているサラを見ると、やはり嫌なことを忘れる。
シンジにとってサラは必要不可な存在だ。
「朝だよ」とサラの体をゆさゆささせる。
サラは目を擦りながら「う〜ん」と、まだ起きれないようだ。
朝といっても宇宙戦艦の中に居ては朝日が当たる訳でもないため、朝になった実感が全く湧かない。
「もう7時?」
「そうだよ」
「は〜い」
と言って起き上がり、シンジと同じく大きく背伸びをして大きなあくびをした。
シーツが下がって乳房が露わになったが気にしない。
「顔を洗ってくる」とベッドから出て、床に置いてあった下着を持って立ち上がるとシンジの下半身が露わになったが、やはり気にしない。
シンジはそのまま洗面所に向かった。
サラもベッドから立ち上がると裸のまま入り口にある全身が映る鏡に自分の裸体を写した。
いつもの習慣だ。
サラはいつも裸で寝ている。そして起床後は必ず全身が見える鏡で全身をチェックしてる。
両手で胸を鷲掴みにしマッサージ、次に腰に手を当てグイグイ、背中を向けてお尻をチェック。
また前を向いて全身の再チェック。
軽く屈伸して「よし」と一言。
椅子の背もたれにかけてあったハーフパンツを履こうとしたら、後ろからシンジが
「下着は?」
「履かなくてもいいよ」
「ダメだよ!みっともないから履いて」
ハーフパンツを履きかけた動きが止まったと思うと、シンジの方に振り向いて、思いっきりほっぺたを膨らましていた。
渋々、履きかけたハーフパンツを脱いでシンジに渡した。シンジは既に下着を着ている。
サラは椅子の座面に置いてあったショーツを履いた。
続いてブラジャーを取った。小ぶりだけどハリのある胸が、ちょっとだけ大きく見せるブラジャーで覆われた。
ホックを付けるやいなや、両腕をピンと上げて、目をつぶって笑みを作った。
これは明らかにTシャツを着せて欲しいアピールだった。
シンジはため息と共に肩を落とした。
椅子の背もたれにかかっていたTシャツをとって、上からスパッと着せてあげた。
腕を下ろしたサラは、目を開いて満面の笑みでシンジを見つめていた。
普段は看護師としてとても頼りになる女性なのだが、シンジの前では全くの別人に変わっている。
このギャップがシンジにとって、とても気持ちがいい。
甘えさせてもらって、甘えを聞く。これも生きていればこそできること。こういう当たり前のやり取りでさえ幸せを感じるのもサラという女性の魅力なのだろう。
サラもまた、この姿はシンジにしか見せない。
「ありがとう」そう言いながらシンジの右頬にキスをして部屋を出て行った。
あんなボサボサの頭で大丈夫なのか?
まぁいいか。
ふと気を抜くと、お腹が空腹の合図を知らせる。
朝食の後、そのままブリーフィングだ。
【第五話】ルナツー に続く
次回2021年9月25日12時配信予定
【注記】この物語はフィクションであり非公式です。また、公式には出てこない機体も登場するなど、パラレルワールド的な物語である事をご了承ください。
~前回までのお話はこちら~