機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

一年戦争後の宇宙世紀の世界観を独自の目線で表現しています。

【第五話】ルナツー

 

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機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

【第五話】ルナツー

 

宇宙世紀0080年6月19日12時

 

ホーネットとユイリンは予定通りルナツーに帰港した。

ルナツーはアルバトロス隊の本拠地がある。

司令官はリック・クルーガ少将。アルバトロス隊の指揮も執っている。

ルナツーは元は小惑星ユノーでコロニー建設用の採掘資源衛星としてアステロイドから運ばれてきた。

0051のスペースコロニー建設凍結以来用途を失ったユノーは0060に連邦の軍事拠点として基地化されルナツーとなった。

月軌道上にあり、地球を挟んで月の真裏に位置することから2番目の月=ルナツーと名付けられた。

連邦が管理する天体の中でも月の次の大きさを誇っている。

0077にルナツーと同じ軌道上にあるL3にサイド7建設が決定してからはルナツーが再び採掘資源衛星として活躍することになる。

連邦最大の資源衛星ということでジオン残党討伐隊の本拠地として最適であると判断され、アルバトロス隊の本拠地となった。

シンジやアルバトロス隊員、サラの自宅もルナツーの居住エリアにある。

ルナツーは基地、居住、資源とオールマイティーな機能を持った衛星なのである。

 

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ルナツー ©創通・サンライズ

 

第一ポートに接舷したホーネットは、乗組員の下船が始まった。

ホーネットに搭載してある機器類の多くも下船させなければならない。

その中でも最大級のサイズのモビルスーツパイロット自身で運び出さなければならない。

自分の荷物も運びださなければならないが、そこは別のクルーがやってくれる。

今回の作戦は1週間にも満たない日数だったので荷物の量もたかが知れている。

中サイズのスーツケースで充分な量であるため他人に任せられる。

しかしモビルスーツはそうはいかない。

持ち運ぼうとすると数十人が必要となるため、やはりパイロットの仕事となる。

とはいえ他の荷物を持ち出すまではモビルスーツは動かせないため、他の作業の手伝いをしつつ、1時間ほどでようやく動かせる状態になった。

アレンの合図でシンジとローラン、そしてジョージのジムがカタパルトに出てきた。

護衛役として搭乗していたジョージも共に下船する。

ジョージの搭乗機はジム・コマンドー宇宙用だ。

シンジのジム・ドミナンスと同じフレームを使い、装備を簡略化した言わばジム・ドミナンスの量産版と言える。

大戦末期に製造されたがすぐ終戦となったため、少数しか生産されていない。

出撃ではないため、カタパルトで射出されるわけではなく、歩いてカタパルトに出てきて、バーニアでゆっくりと流れていく。

第一ポートとモビルスーツデッキは少し離れているが内部で繋がっている。

四機は連絡通路のような通りを自力飛行で流れていく。

またすぐ開けた空間に辿り着く。ルナツーモビルスーツデッキだ。

ホーネットとは桁違いの広さと設備が備わっている。

ルナツーでは、モビルスーツの設計、開発、製造、修理に改修と、全てが叶う。

伊達に連邦最大の衛星基地ではない。

でもどこか上手く機能出来ていない感じが、とても残念だとシンジは思う。

四機は所定の位置に定着させた。

アルバトロス隊は全10機なのだが、シンジ達が合流しても5機にしかならない。

残りの5機はサイト4へ再捜索に向かったからだ。5機の帰港は明日以降になるらしい。

コックピットから出ると一人の男が足元からシンジを見上げていた。

シンジはその男性に向かって敬礼しながら流れ降りた。

「無事帰還ご苦労だな」

労いの言葉をかけてくれた男性はモーリン・ラング技術大尉。

かつてテム・レイと共に連邦のモビルスーツ開発を成功させた立役者の一人だ。

シンジも共に開発に携わった、テムと共に恩師と崇めている存在だ。

「どうだね、機体の状態は?」

「すこぶる順調です」

シンジは軽快に答えた。

「作戦が終わってからまだゆっくり休んでないのだろう?明日からの休暇でゆっくり休むといい

「あ…」

シンジはすっかり忘れていた。

サイド4捜索作戦が終了してルナツーに帰港したら、一週間の休暇を取る予定だった。

「なんだ、忘れていたのか」

「はい、完全に忘れていました」

照れるように右手を頭の後ろで掻いているシンジを見て少し苦笑いをしてモーリンは続けた。

「この後君に相談したい事がある。15時にまたここに来てくれるか?」

「はい、大丈夫だと思います。では15時にここに来ます」

「うむ、頼む」

「は!」

今日の午後は特に予定は無く、とにかく17時までモビールスーツデッキ付近にいればいい。

足を揃え、背筋を伸ばし、顎を引いて右手をサッと上げる。100%の敬礼をしてみせて、エアロックに流れて行った。

ゆっくりとエアロックに流れながら辺りを見渡たすと、「相変わらず女性率が低い職場だ」、サラという存在が有れど、ここはやはり男の発想だ。

「??!」

突然背後に気配を感じたと同時に背後から腕で首を掴まれた。

「ようシンジ、アレン隊長が司令に報告に行くから司令室の前で待ってろだってさ」

ジョージだ。

「ああ、昼飯はその後だな」

「えー、俺腹ペコなのに」

「しょうがないだろ、報告なんてさっさと終わらせればいいさ」

「そうだな」

ジョージが渋々答える。

エアロックが目の前に迫り、シンジは掴んでいるジョージの腕を離そうとしたが、案外強い力で掴んでいて、結局掴まれたままエアロックに流れ込んだ。

 

6月19日14時30分

指令への報告はアレン隊長が簡潔に説明してくれたおかげで短時間で終わったのだが、その後食堂でジョージの長話を聞いてたおかげでお昼に時間をかけ過ぎてしまった。

シンジは軍施設にある自分の住居に戻り、部屋の前に置いてあるスーツケースを見つけた。

ホーネットでまとめた荷物が入っているスーツケースだ。

指紋認証でドアのロックを解除し、スーツケースと一緒に部屋に入った。

ルナツーで働いている軍関係者は軍施設内と民間エリア内にある住居を軍から支給される。もちろん無償だ。

家族持ちは民間エリアの住宅に住む事が多いが、シンジは前大戦で両親を亡くしているため、完全な独り身だ。そのため生活の殆どを軍施設内の住居で過ごしている。

民間エリアの住居を使うのは、サラと休みが重なって、共に夜を過ごす時くらいだ。

軍施設内の住居とはいえ、広さは充分あり、食事は食堂が24時間365日開いている。クリーニングも定期的にできるし、依頼すれば部屋のクリーニングもしてもらえる。もちろん全てタダだ。至れり尽くせりにも程がある。

そのためお金を使うことは殆どない。シンジ自身も自分の貯蓄がいくらなのかちゃんと把握していない。おそらくかなりの額が貯まっている事が予想できるが。

このまま生き延びてここに居続ければかなりの財産を築く事ができるだろう。

そうすれば、将来自分に子供ができた時もそのお金を全て子供に使う事ができる。

なんて、先の事を考えているのかいないのかよく分からない思考がたまに頭の中を走る。

とりあえず喉が渇いたので、スーツケースを寝室のタンスの脇に置いて、キッチンの冷蔵庫を開けた。

飲み物の他に長持ちする食べ物が幾つか入っている。おやつみたいなもんだ。

冷蔵庫のドアポケットにコーヒーの缶が並んでいる。ブラック、微糖、加糖と揃っている。

この後頭と体を使う事も考えられるので、加糖のコーヒーを選んだ。

シンジはシチュエーションでコーヒーをチョイスしている。

半分くらい飲んだ所で、リビングの窓から外を眺めた。

小惑星の住居ならではの無機質な空が広がっている。街路樹や公園の樹木はあるものの、やはり空が無いというのはなんとも寂しい。

残りを飲み干して空き缶を捨てようとしたが、捨てる時はいつも緊張する。

この部屋のダストボックスは、ゴミを入れるとそのまま集積所まで運んでくれる。

そのためゴミを纏めたりゴミ捨てに行く必要がないのだ。どこまでも至れり尽くせりである。

しかし分別にはとても厳しい。リサイクルの意識は西暦から宇宙世紀に引き継がれている。

宇宙で生活しているからといって資源は無限ではないし、ゴミをホイホイ捨てていいというものでもない。とても高いモラルが求められている。

もし空き缶を可燃に捨てたりしようものなら、翌日管理事務所からおとがめを受ける。誰が出しているかもしっかり管理されているのだ。

それは士官だろうと例外はない。

管理事務所はコロニー公社の管理下にあるため、例え軍といえども手出しできない。

空き缶を空き缶のボックスに入れた事を確認して時計を見ると15時まであと15分だ。

ここからならモビルスーツデッキまでは急げば10分かからない。逆を言えば急がなければ10分はかかるという事だ。

シンジはモビルスーツデッキに急いだ。

 

6月19日15時

「今回の改修のメインは新規に開発したジェネレーターに交換して、パワーの向上を図ることだ。このフレームならあと二割くらいパワーを上げても耐える事ができる。あとは各所にアポジモーターを追加して機動性も向上させる。」

モーリン大尉がドミナンスの改修内容を説明してくれている。

「君の戦闘データを解析すると、シールドを使った防衛行動を使った履歴が極めて低いことが分かったから、デッドウェイトになるシールドは装備から外した。これで機動性は更に向上するだろう。また、新型のセンサーも取り付ける予定だ。他に何か希望はあるか?」

シンジは両腕を組んで応えた。

「確かにシールドはオミットした方が戦いやすい感じがしますね。特に接近戦では間合いがとりずらいので、シールドは必要なくていいと思います。

希望と言えば、腕のボックスタイプ・ビームサーベルはサーベルだけで無く、ビームキャノンとしての機能も追加して欲しいですね。そうすれば威嚇射撃できます。」

「なるほど」

シンジは更に続けた。

「あと、ビームサーベルはやはり二本欲しいです。場合によっては二連ビームキャノンをパージする事もあるかもしれませんが、結局右手はフリーになってしまいますから。」

モーリンはシンジの要望をタブレットに書き留めた。

バックパックは新規のモノに交換するから、ビームサーベルは二本にする予定だよ。」

「ありがとうございます。」

ひとまず意見交換は終わったが、細かい所の調整をしていたら、結局5時を過ぎていた。

久しぶりの長期休暇のため、いろいろ準備がある。

アルバトロス隊のメンバーと話しながらのんびりやっていたらもう8時だ。

みんなで晩ごはんに行くことになったので、シンジの仕事もここまでだ。

さて、明日から一週間、何をしようか…

 

【第六話】ストームブリンガー に続く

2021年10月2日12時更新予定

 

【注記】この物語はフィクションであり非公式です。また、公式には出てこない機体も登場するなど、パラレルワールド的な物語である事をご了承ください。

 

 

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