機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

一年戦争後の宇宙世紀の世界観を独自の目線で表現しています。

【第十四話】激突

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機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

【第十四話】激突

 

宇宙世紀0080年7月4日13時

地球に向かうコロニーの落下阻止限界点まで3時間余り。

ペネディソン隊が第2防衛ラインを突破した知らせが入った。

出撃してから30分程での突破だ。

その報が入ると同時に艦隊は最大戦速でコロニーに向かった。

「ペネディソン隊は補給に帰還してください」

ミッドウェイのオペレータの声がカマネラにも響いた。

するとペネディソン隊の隊長「ショーン・モルツ」の声で

「我々はまだ余力がある、このまま地球軌道艦隊の増援に向かいたいがよろしいか?」

やや途切れながら通信が入ってきた。

ペネディソン隊指揮官マーク・ファン大佐は

「了解した。ミッドウェイもそちらに向かう、アルバトロス隊はそのままコロニーへ向かってくれ」

「よし!、我々はこのままコロニーへ向かう。対空監視は密に!敵の動きは?」

「ありません、最終防衛ライン上にモビルスーツが展開しています。数は22。その後方にクワジン級とムサイ級、パプア級が確認できます」

シナプス艦長とオペレータのやり取りもカマネラのモビルスーツデッキにも届いている。

「聞こえたな?数では負けているが、こちらの方が遥かに優勢だ。でも油断するなよ」

ミカ中尉の無線がシンジとジョージに入った。

「これだけの戦力でよくここまで来れたもんだな」

ミカが独り言のように発した。

「連邦の監視の甘さが露呈されていますね」

ジョージだ。

「だが軍はこれがジオン残党の仕業ということは公表しないだろうな」

「どうしてですか?」

「こんなにいとも簡単にコロニーを強奪されて地球落下軌道に乗せられるなんて、恥さらしもいいとこだろ。この作戦は俺たちが阻止できるのは間違いないだろうけど、その手柄も俺たちってことにはならないだろうな。俺たちの名前を出すとジオンが絡んでるって思われるからな」

「な~んか納得いかないですね~」

ミカとジョージのやり取りをシンジも聞いていた。

まもなくコロニーまで距離5000というところで、シナプス艦長の声が響いた。

「よし、アルバトロス隊出撃!」

「了解!」

アルバトロス隊の返事が響く。

そしてメインハッチが開かれた。

ようやく直接外を見ることができた。既に目の前にコロニーが迫っている。

左舷デッキのシンジたちC小隊も、ミカから発艦される。

数が多い右舷デッキでは既に発艦が始まっている。

ミカの発艦後、シンジもカタパルトに向かった。

ルーティン通りにカタパルトにストームブリンガーの両足をセット。発艦体勢に入った。

カウントダウンが始まる。

「シンジ・アラタ少尉、ストームブリンガー、行きます!」

カウント0で体全体にGがかかる。

発艦されるとミカのジムの右後方に付けた。

後から発艦されたジョージのジム・コマンドーはミカの左後方に付いた。

他の小隊も同じ陣形で敵陣に向かった。

艦隊の牽制射撃も始まり、足元をメガ粒子砲とミサイルが何本も敵艦隊へ放たれている。敵艦からの艦砲射撃もこちらに向かって放たれている。

アルバトロス隊は北へ向かって回避した。その方向にはモビルスーツ隊が待ち構えている。次はモビルスーツ戦だ。

既にメインモニターには20数機の敵モビルスーツ隊が左右に展開されている様子が映し出されている。その後方には戦艦が10隻ほど、そして巨大なコロニーが背景と化すくらい目の前に迫っていた。

モビルスーツも索敵をするまでもなく機種の特定ができた。

多くはザク系で、ドム系もちらほら見られたが、ゲルググは見えなかった。

「あの男、アポリはいないのか...」

シンジは、もしアポリがいたらこの戦いの意味を問いたかったが、

「やっぱりな...」

シンジは少しホッとした。

そしてミカの合図により、一気に敵陣に突入だ。

シンジは右足のスロットルを踏み込んだ。元々ジム・ドミナンスだったとは思えない加速力を発揮するストームブリンガーは、危うく隊長機のミカのジムを追い抜きそうになった。

少しスロットルを緩めると、ザク数機が目の前に迫っていた。

「ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ」

ロックオンアラートがストームブリンガーのコックピットに響いた。敵機にロックされたのだ。同時にロックした敵機の詳細画像がメインモニターに映し出された。正面の2機のザクだ。

しかしシンジは回避行動を取らない。回避はストームブリンガーの回避プログラムによってオートでしてくれる。

ザクマシンガンが発射されたが回避プログラムが予測してかわしてくれる。

至近距離だったり、ロックされなければ作動しない等問題点はまだまだあるが、この距離からの射撃なら確実にかわせる。

ストームブリンガーは左手でバックパックにマウントされたビームサーベルの柄を握ったまま、左側のザクに突進した。

ストームブリンガーが射撃をかわしながら接近してくるため、ザクは射撃をやめ回避しようとしたが間に合わなかった。

「遅いよ」

左手で引き抜いたビームサーベルをそのまま振り下ろしながらサーベルを成型して、ザクを一刀両断。

両断したのはザクの胴体と下半身だ。ここなら誘爆しないしパイロットも死なない。

だがまだロックオンアラートが鳴り続いている。もう一機のザクがザクマシンガンをストームブリンガーに向けて斉射してくる。怯むことなくかわしていると、ザクを一本のビームが掠めた。ジョージの援護射撃だ。

一瞬怯んだザクに、シンジはすかさず体勢をザクに向けてロックオン、即座にライフルを発射し、ザクの首元を直撃し、頭部を吹き飛ばした。

モビルスーツの胴体首元に、システムを制御する処理装置、いわゆるコアが組み込まれている。

このコアを破壊すればモビルスーツは完全に沈黙することになる。

頭を吹き飛ばすだけではザクを無効化する事ができないため、首元を狙った射撃だ。

シンジはジョージにサンキューの合図を送ると同時に体勢を整えて、状況を見直した。

今度はミカがザクとドムに追われているのをキャッチしたシンジは

「ジョージ、行けるか?!」

「オッケー!」

ジョージはロングバレルのライフルを構えたまま、ミカの援護に向かった。

シンジもその後ろに付こうとした直後、

「!?」

足元に殺気の様なものを感じた。

同時に右腕の操縦桿と左足のペダルを踏んで回避行動を取る。それは回避プログラムが反応する前だったが、ストームブリンガーは反応してくれた。

直後、目の前をビームの塊が横切る。

「何だ、今のは??」

シンジは再度足元を索敵すると、猛スピードで接近してくる機体を捉えた。接近と言うより突進だ。ドム系のその機体はバズーカらしき物を構えている。機体の識別をする間も無くまたロックオンアラートが響く。

「くっ」

この間合いだと回避プログラムが反応しないかもしれない。シンジは再度マニュアル操作で回避した。

またビームの塊が目の前を通過する。

目の前まで機体が迫ったため識別ができた。リックドムⅡだ。構えているのはおそらくビームバズーカ。

ジオンがモビルスーツ用ビーム兵器開発の初期段階で開発した大型のビーム兵器だが、ビームの収束率が連邦のビームライフルよりも悪く、接近しなければ相手に致命的なダメージを与えることができない。

バズーカが聞いて呆れる代物ではあるが、相手の間合いに飛び込んで止めを指す戦法を得意とするナイジェルにとっては、むしろ好都合なバズーカと言え、ガンダムと対戦するために装備してきた。

ガンダム、貴様の相手は俺だ!!」

リックドムストームブリンガーの目の前を通過すると体勢を反転させ再びストームブリンガーに向けてビームバズーカを構えた。

「させるか!」

シンジもライフルをリックドムに向けた。接近戦なら当然こちらに分がある。マシンガンモードに切り替え、ロックしないまま斉射した。

リックドムは構えを解いて回避したため、左手に持ったままのビームサーベルで切り付けようとしたが、一瞬目の前が光に包まれた。

「何だ??」

ドムの胸部に装備された低出力の拡散ビーム砲によって、瞬きより少しだけ長く目を閉じてしまった。そして目を開けると、モニターにはビームバズーカの銃口が映し出されていた。

 

【第十五話】一騎打ち に続く

2021年12月4日12時更新予定

 

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