機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

一年戦争後の宇宙世紀の世界観を独自の目線で表現しています。

【第十五話】一騎打ち

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機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

【第十五話】一騎打ち

 

宇宙世紀0080年7月4日13時15分

 

ガンダム!貴様の相手は俺だ!!」

 

ストームブリンガーの目の前を通り過ぎると、すぐさま急制動、体勢と砲身をストームブリンガーに向けたが、チャージ完了まであと3秒の表示が出ていてロックオンできない。

「チッ」

舌を打ったナイジェルは一旦構えを解いたが、今度はストームブリンガーのライフルがこちらを向いている。

ロックオンアラートが鳴らないため単なる威嚇だと思ったが、何と発砲してきた。

「ロックオンしないで発砲するのか!?それでこそガンダムだ!」

直撃を避けるため回避行動を取ろうとすると、ストームブリンガーは今度は左手に持ったビームサーベルで斬りつけてきた。

「そう来ると思ったぞ!」

動きを読んでいたナイジェルはリックドムの胸部拡散ビーム砲を放つと、一瞬ストームブリンガーの動きが鈍った。

モビルスーツ相手ではダメージを与えることは皆無である胸部拡散ビーム砲だが、目眩しとして大変な効果を出す事がある。

かつて黒い三連星ガンダム相手に胸部拡散ビーム砲を目眩しとして使っている。

僅かな隙も逃さないナイジェルは、ビームバズーカの銃口ストームブリンガーの喉元に押し付けた。

「終わりだ!!」

勝利を確信したナイジェルは右手の操縦桿のトリガースイッチを押そうとしたが、その直前、機体に激しい衝撃が起きた。

ストームブリンガーは体を後ろに反らし、バク転の要領でそのまま左足でビームバズーカを蹴り上げたのだ。

その直後、ビームが発射され、ナイジェルのリックドムは更に体勢を崩した。

そのまま一回転し、再び体勢をリックドムの正面に向けると、この隙にもう一度左手に持ったビームサーベルで斬りつけた。

ナイジェルは考える間も無くビームバズーカでビームサーベルを防いだ。頑丈なビームバズーカは簡単に真っ二つにならず、その間にナイジェルは体勢を立て直す事ができた。

ビームバズーカが真っ二つになると、手元に残った本体側をストームブリンガーに投げつけ、一気に距離を取り、すかさず腰にマウントしていたマシンガンを右手で掴んで、そのままストームブリンガーに撃ちつけた。

シンジは咄嗟にコックピットを左手で庇う動作を取ってしまった。

銃弾が左手の甲に直撃し、ビームサーベルが飛ばされてしまった。ボックスタイプビームサーベルもダメージを受けたようだ。だが機体本体への大きなダメージは無い。

「クソ!」

反撃しようと右手のビームライフルを構えると、リックドムは右手に持ち替えたヒートサーベルで斬りつけてきて、ビームライフルを真っ二つにされてしまった。

残った部分を投げ捨てると、バックパックにマウントされているビームサーベルの柄を抜き取り、ビームを形成し、リックドムに斬りつけた。

ヒートサーベルはビームサーベルに比べ強度が劣る事はナイジェルも承知している。

それでも持ち前の気迫と全パワーを使って押し込む戦い方は、ストームブリンガーを押さえつけていた。

「何でヒートサーベルでここまでできるんだ!?」

シンジ自身もリックドムの気迫に圧倒されかかっていた。

でも機体性能はこちらの方が上だ。こんなところで墜される訳にはいかない。

サラの顔が脳裏をよぎった。

「こんな処で!!」

右足のスロットルを踏み込み、右手の操縦桿を押し込むと一気に押し返した。

「流石だな、ガンダム!」

ナイジェルも同様にスロットル全開で押し返そうとするが、やはりパワーでは勝てない。

一度受け流し、何度か剣を交えたが、ヒートサーベルに限界のアラートが鳴った。

最後の力を振り絞ってストームブリンガーを押さえ込むと、別の何かに反応したストームブリンガーは体勢を崩してしまった。

「しまった!」

「もらった!!」

ヒートサーベルを両手で持ち、一気に突き刺そうとしたが、それを被弾した左腕で掴むように受け止めた。

「何だと!?」

「左腕はくれてやる!」

一気に形勢逆転。

右手のビームサーベルのビームを格納し、同時にボックスタイプビームサーベルを半分の長さで形成すると、完全に動きを封じ込められたリックドムの喉元(ドムは頭部と胴体が一体のため、胸部の上の部分)を突き刺した。

「うぉぉ!!」

ナイジェルは叫弾すると、ドムは完全に機能を停止し、生命維持装置と一部のモニターのみが点いた状態になった。

シンジもリックドムのモノアイが消滅したのを確認し、サーベルを引き抜いた。

何を操作しても反応が無い。

「コアだけを潰したのか??」

僅かに映るモニターに映し出されるストームブリンガーは、こちらに再度攻撃を仕掛ける素振りを見せない。

ガンダムパイロット、聞こえるか!!何故とどめを刺さない!!?」

ナイジェルはシートから立ち上がって大声で叫ぶと、接触回線でそのままのボリュームでストームブリンガーのコックピットに響いた。

あまりの声の大きさに、シンジは意味も無くノーマルスーツのバイザーを開けてしまった。

「俺にはアンタを殺す理由はないよ」

この一言で終わりだ。

「うぅ…」

ナイジェルは戦士としても人間としても負けたと思い、全身の力が抜けてシートに座り込んだ。

なんとなくリックドムパイロットの心中が分かったシンジは、少し表情を緩めた。

落ち着いたところで状況を確認する。

索敵チェック。

味方機の撃墜0。

敵機は半数以上が消失。

また、別方向からの味方機の接近も確認できる。

「どうやら俺たちの勝みたいだな。あとはコロニーの軌道変更か」

シンジたちの任務はあくまでも敵防衛ラインの排除だ。

それに成功すれば、コロニーの軌道変更はペネディソン隊の特別部隊が実行する。

阻止限界点まで2時間強。ギリギリとまではいかないが、なんとか間に合ったといったところだ。

「ピピピピ」

味方機が自機をキャッチした信号が鳴った。

「シンジ、大丈夫か?」

かすれた無線だがジョージだ。

信号の方を確認すると、ジョージとミカのジムが近づいてきたのが確認できた。

「大丈夫か?」

今度は接触回線でミカが聞いた。

「左腕をやられましたが、大丈夫です」

「このリックドムにやられたのか?」

「はい」

パイロットは?」

「中でおとなしくしているはずです」

「そうか」

よく見ると全体にダメージを負っているストームブリンガーを見てジョージが

「このドムのパイロット、かなりの凄腕だったのか?」

「ああ、ちょっと焦ったよ。こっちの方が性能は上なのに、なんか、気迫が凄かったんだ」

「ジオンのパイロットってそうだもんね」

「本当だよ。そっちはどうなんだ?」

シンジはジョージに聞いたが、ミカが答えた。

「もうすぐ補給を終えたペネディソン隊と地球軌道艦隊が合流する。それで最終防衛ラインは突破だ、戦艦もムサイ5隻を沈めた。後は親玉が乗っているグワジンとパプワ級だけだ。我々はこのまま帰還しよう。アレン隊長とジャック隊長の隊もまもなく帰還する」

「了解です」

シンジはホーネットの位置をトレースした。

「このドムは俺が持つよ」

ジョージは両腕でドムを掴んで、ミカの後方に付いて、カマネラに向かった。

 

【第十六話】二人の未来 に続く

2021年12月11日12時更新予定

 

【注記】この物語はフィクションであり非公式です。また、公式には出てこない機体も登場したり、一部独自の設定があるなど、パラレルワールド的な物語である事をご了承ください。