機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

一年戦争後の宇宙世紀の世界観を独自の目線で表現しています。

【第二十二話】ガンダム再生計画

f:id:uvertime:20210902211549j:plain

機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

【第二十二話】ガンダム再生計画

 

ガンダムアムロ・レイの活躍によりジオンに『白い悪魔』と言わしめた連邦を代表するモビルスーツであることは誰も疑いを持たないだろう。知っての通り戦時中は余剰パーツを使った量産タイプも含め10数機のガンダムタイプが投入され、いずれも高い戦果を挙げていることは、もちろん機体の性能もさることながら、『ガンダムは恐ろしい敵』というイメージをジオンに植え付けたことも間違いないだろう。戦後一年、連邦の戦後処理もようやく落ち着ちついた。そしてジオン残党の動きは今はおとなしいが、これが奴らの再決起の機会をうかがっているものだという考えは否めない。そこで今回新たなモビルスーツの開発計画の一つとして『ガンダム』という名前を前面に押し出し、抑止力とすることも目的の一つだ。そして先にも少し述べたが、この先本格的なプロジェクトとして新型ガンダムの開発計画も立ち上げる予定となっている。そのためにも今回の『ガンダム再生計画』は、今後の連邦のモビルスーツ開発を左右する非常に重要な計画となることを肝に銘じてほしい。ここまでで何か質問はあるか?」

コーウェンは一度話しをやめ、質問を仰いだが、特に誰も質問しなかった。

「うむ。では改めて君たちは1月1日付けで第802独立試験部隊に編入されたわけだが、この部隊は今回のプロジェクトのために新設された部隊だ。三小隊として、ミリアルド大尉を第一小隊長、シンジ中尉を第ニ小隊長、ヨナ中尉を第三小隊長として編成を組んでもらう。詳しい編成については明日改めて話しをする。他の隊員たちも今日着任している。今日は君たち小隊長のみでの話しだ。明日は全員でブリーフィングを行う。作戦開始は明後日を予定している」

コーウェンは水を飲んだ。話も終わりそうな雰囲気になっている。

「繰り返しになるが、今回のプロジェクトは今後の連邦の軍事体制を大きく変えるプロジェクトにするつもりだ。上層部にはまだまだ大艦巨砲主義の体質が根強く残っている。先の大戦では我が軍のモビルスーツは思いの外機能しなかったのが私の所感だ。結果的に数で圧倒したに過ぎなかったと思っている。上層部たちの考えを正すためにも今回のプロジェクトは是非とも成功させねばならないし、後塵を配したモビルスーツ開発についても大きなアドバンテージを持たせたい。以上だ」

全員立ち上がって敬礼した。

「うむ、よろしく頼む」

コーウェンも敬礼で返した。

「この後は三人ともフリーとする。但し、指定区域からは出ないように。明日の朝同じ時間にこのルームでブリーフィングだ。詳しい事は各マネージャーに確認してくれ」

コーウェンは三人それぞれに声を労いの声をかけた。

「シンジ中尉は久しぶりの地球だな。慣れるのに少しかかるかもしれないが、君には特に期待している。頑張ってくれ」

コーウェンはシンジの右肩に手をポンと乗せた。

「は!、ご期待に添えるよう全力を尽くします」

シンジが敬礼するとコーウェンは付き人と共に702会議室を後にした。

やはり最初に口を開いたのはヨナだった。

「ちょっと、びっくりだよね!ガンダム再生計画だって!私たち新型のガンダムのテストパイロットになるみたいね」

「今回はまずはRX-78の再テストといったところだな。オレもガンダムタイプには搭乗したことがないから、今から楽しみではあるよ。そういえば、シンジは今はガンダムタイプにのっているんだってな」

「え?うそー、私聞いてないわよ。何タイプ」

「元々はジム・ドミナンスだったのを改修してもらったんです、モーリン大尉に」

「なるほどな。でもドミナンスのフレームならガンダムとしても充分な性能を発揮できるだろうな」

「はい。元々ドミナンスだったとは思えないパワーと機動性ですね」

「私のジムスナイパーIIもチューンしてもらう時に顔をガンダムにして貰えばよかったなー」

両手を頭の後ろで組んで、少し上を見ながら残念がったヨナは、

「それに、私たち隊長だよ」

急に話しを変えた。

「ヨナは隊長の経験はないのか?」

「リーダー的にまとめた事はありましたけど、こんなに明確な小隊長としては初めてです」

「俺もですね」

「特に二人は大抜擢といったところだな」

シンジとヨナは目を合わせて少し歯に噛んだ。

「この後はどうする?一応自由行動という事だ」

「また夜は三人で会いたいですね」

「そうだな。じゃあシンジの部屋はどうだ?」

「さんせー!」

ヨナは右腕を垂直に上げた。

「もちろん大丈夫です。まだ荷物もまとまって無くて殺風景ですが」

「私は気にしないから、お酒いっぱい持っていくね」

いや、こっちが気にするから、と思いつつ、この辺のリズムもジョージと重なる。

ヨナは体全体からウキウキ気分が溢れ出していた。

「本当に大丈夫なのか?」

ミリアルドが念のためにもう一度確認した。

「はい、もちろんです。自分も二人の話しを聞くの楽しみです」

「でしょー」

まだまだウキウキ気分が続くヨナ。

「聞いたな?ミハエル、スケジュールよろしく頼む」

「わかりました」

「ロレンツァ、私の方もお願いね」

「オッケー」

ミリアルドとヨナはお互いのマネージャーに確認すると、

「アンディ、こっちもよろしくな」

「了解です」

「じゃあ、一旦ここを出よう」

「はい」

シンジとヨナは返事をはもると、ミリアルドとマネージャー達と共に702ブリーフィングルームを出た。

長い長い通路を歩き、エレベーターを乗り継いでようやく本部ビルの建屋を出た。

「本当に広いわね。また明日ここに来るかと思うとなんか気が重いわ」

ぐちぐち言うのもヨナの性格だ。

「でもここにいる将軍達も毎日こんな広いビルを行き来しているんですかね」

「彼らの行動範囲なんてたかが知れてるさ。一日中同じ部屋にいることが殆どだろう」

「そうですよね。おじさん達が毎日歩く距離じゃないですもんね」

「ヨナ、口を慎め」

「ごめんなさい」

ミリアルドがヨナを制したが、ヨナの表情からは反省の色は微塵も感じられない。

シンジは二人のやり取りを見ながら、以前三人で共に仕事をしていた時を徐々に思い出し始めていた。

「何よ?シンジ」

「いや、なんだか懐かしいと思ってね。この三人で連邦のモビルスーツの歴史が始まって、また新たな連邦のモビルスーツをまたこの三人で作れるんだと思うとね」

「コーウェン将軍もそこも含めて我々に白羽の矢を立てたのだろう。また我々の手で連邦に新たな歴史を作ってやろうじゃないか」

「そうですね。ではまた夜お待ちしています」

二人と別れたシンジは、一度自宅に戻ることにした。

ああは言ったものの、やはりこの状況で他人を入れるわけにはいかない。

「手伝ってくれるか?」

「もちろんですよ」

どうせやらなければいけない片付けだ。

後回しにするつもりだったが、重い腰を上げることにした。

 

【第二十三話】地球の重力 に続く。

2021年1月29日12時更新予定

 

【注記】この物語はフィクションであり非公式です。また、公式には出てこない機体も登場したり、一部独自の設定があるなど、パラレルワールド的な物語である事をご了承ください。