機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

一年戦争後の宇宙世紀の世界観を独自の目線で表現しています。

【第二十一話】ジョン・コーウェン

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機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

【第二十一話】ジョン・コーウェン

 

宇宙世紀0081年1月8日 9時

「おはようございます」

呼び鈴の次にアンディの声がインターフォンに響いた。

「おはよう、今出る」

シンジも既に準備は万端だ。襟のホックも今回は溜める。現地で提出するという辞令も持った。

玄関のドアを開けると、アンディは待ち構えたように敬礼していた。

「おはようございます」

アンディは改めて挨拶した。

「そんなに堅苦しくする必要ないっていつも言ってるだろ」

「そういう訳にはいきませんから」

もうこのやり取りは何度も続いている。

二人はエレベーターで一階に降り、エントランスからマンションを出た。

エレカに乗り、昨日の発着場とは違う、ジャブロー最大の司令塔に向かう。セキュリティを通過すると目的の建屋に到着した。ただでさえ広いジャブローの敷地内にあって、一際目立った大きさの建屋だ。

建屋の入り口からブリーフィングルームまで歩いて10分では辿り着けない。

アンディが時間に余裕を持って迎えにきた理由がよくわかる。

たどり着いた702ブリーフィングルームの扉の前に立つと、アンディが軽くノックしたのちドアを開けた。10人程度が入ることができるブリーフィングルームには既に4人が席に座っていた。

「ミリアルド大尉、それにヨナも」

シンジは知っている顔を見て、即座にその二人の名前を叫んだ。

「シンジか!?。久しぶりだな、元気そうで何よりだ」

「また会えて嬉しいよ、シンジ」

ミリアルド・コーナー大尉とイ・ヨナ中尉は共にRX計画時代から苦楽を共にした同志だ。

二人共シンジと同様、元はエンジニアとして携わっていたが、現在はパイロットだ。

シンジはまたしても二人と握手した。

「私が最初に来て待ってたらミリアルド大尉が入ってくるんですもの、ビックリしたわよ。そうしたら今度はシンジでしょ、もうビックリ通り越しちゃったよ」

ヨナは22歳の女性でとても明るく、ちょっと破天荒な感じはジョージに似ている。

「俺も何も聞かされてなかったからな。またこの三人で仕事ができるってことなのかな?」

ミリアルドは45歳のベテランだ。テムやモーリンと同世代の彼はシンジやアリスのような新人の教育係的な存在だったことから、二人はもちろん、周りからの信頼も厚い。

「また後でゆっくり話す機会があればいろいろ伺いたいですね」

シンジはミリアルドの方を向いて話かけるとヨナの方にも顔を向けた。

「もちろんそれくらいの時間は設けてある」

野太い声とと共にその声の主、ジョン・コーウェン中将が付き人と共に入ってきた。

三人はとそれぞれの付き人も、一瞬ビクッとした後、立ち上がってコーウェンに向かって敬礼した。

コーウェンも軽い敬礼で返した。

「急に来て済まなかったな。三人が揃ったと聞いたもんでな。少し早いが始めようかと思うがどうかね?」

「もちろん大丈夫です」

ミリアルドはそう返事をしてシンジとヨナを見たが、二人共首を縦に振った。

「では始めよう」

コーウェンは壇上に向かった。

三人が着席したところで、

「まずは君たちに渡した辞令を受け取りたい」

と言うと、付き人に辞令を取りに行かせた。

付き人が三人の辞令を受け取って鞄にしまうのを確認すると、

「この会議は極秘事項であるため資料は配布しない。このモニターに映し出すのみでメモも取ってはならん。各自頭に叩き込むように」

とコーウェンは少し厳しい顔で念を押した。

「は!」

三人は声を揃えて返事をする。

モニターに資料を映し出す前にコーウェンは言った。

「今回三人に集まってもらったのは、薄々気付いているとは思うが、連邦が今後進めていくモビルスーツの開発について、君たちに手伝ってもらうためだ。詳しい話はこの後話すが、君たち三人はいずれもRX計画から携わるエンジニア出身のパイロットだ。数多い連邦のモビルスーツパイロットの中でも、モビルスーツを技術的に理解して操作する事ができる数少ない人材だ。ワシもエンジニアとして今回のプロジェクトを立ち上げる事になった。エンジニアとしての意見と考え、それをコックピット操縦システム他各システムにフィードバックし、自らパイロットとして実証試験をする。それを君たちにはやってもらいたい。連邦のモビルスーツ開発は、戦時中に急場凌ぎで進められたところが多い。各拠点独自の技術が盛り込まれ、それら自体は大変高い技術力で確立されているが、規格やシステムが統一されていない。それらを統一していき、より高い技術力をもたらしていきたいと思っている。少し長くなったが本題に入る」

コーウェンは正面の大型モニターに資料を映し出して、壇上に置いてあった水のボトルを口に含んだ。

コーウェン中将は戦時中は技術少将としてモビルスーツ開発を推し進める改革派としてレビル将軍と共に尽力してきた。

シンジも戦時中に新型の陸戦機のテストパイロットとしてジャブローに入った時に一度だけ面識がある。

コーウェンはその時にシンジがエンジニア出身のパイロットであることを知り目を付けていた。

シンジもコーウェンの独特の風貌と、見た目と違い部下に対する接し方がとてもマイルドであることから強く印象に残っていた。

シナプスがコーウェンを慕う理由が今回接して改めて分かった。

「先にも述べた通り、今回のプロジェクトの本幹はバラバラになっている技術の統一だ。モビルスーツの開発は宇宙ではサイド7でのみ行われはしたが、地球では各開発拠点で独自に開発を行い技術を確立して、それぞれで高性能機の開発を成功させている。それが故に君たちも耳にした事はあるかと思うが、ブルーディスティニーのEXAMシステムの様な軍が承認していないシステムも開発されてしまったことは軍としては大いに反省材料と言える。しかしながらシンジ中尉はサイド7でRX-78の開発に携わっていたと思うが、連邦のモビルスーツの原点はやはりRX-78と言える。結果的にアムロ・レイの操縦技術によって78はジオンに白い悪魔と呼ばれるようになったのだが、それはあくまでも結果であって我々の技術の蓄積によるものではない。今回のプロジェクトは正規のルートによる技術力の蓄積に基づいたモビルスーツの開発である」

コーウェンは手元のパソコンで大型モニターに映し出されている資料を見ながら、たまにこちらを見ながら説明を続けた。

「まず君たちには各拠点に飛んでもらって情報収集をやってもらいたい。本来は優秀なパイロットである君たちの仕事ではないのかもしれないが、我が軍の重要かつ非常に機密性の高い情報を扱うこともあり、君たちにお願いしたい次第だ。当然危険が伴う任務となるため、各一個小隊とし君たちを隊長とした上で編成を組んでもらう。その編成はワシの方で組んであるから、それは後ほど伝える」

コーウェンはまたボトルの水を飲んで一息ついた。

「今回のプロジェクトはこの先に予定されている大きなプロジェクトの準備段階の位置付けとなっている。それまでに情報収集を終わらせてほしい。それが完了したらそのデータを元に一機のモビルスーツを建造する予定となっている。それこそがファーストロットのRX-78だ。君たちも知ってはいようが、ファーストロットのRX-78は三機建造され、-1と-2は大破したが、-3についてはマグネットコーティングのテスト後にこのジャブローで保管してある。

今回新たに-Xとして新造し、-3と共に様々なテストを実施する予定だ」

モニターにはグレー基調の-3、いわゆるG-3ガンダムが映し出されている。

「そして今回のプロジェクトの名称だが、まだ仮称ではあるがこう名付けた。『ガンダム再生計画』」

 

 【第二十二話】ガンダム再生計画 に続く。

2021年1月22日12時更新予定

 

 

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ジョン・コーウェン ©創通・サンライズ